「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」

嫌われる勇気」「幸せになる勇気」(岸見一郎と古賀史健の共著)を再読しました。アドラー心理学を解説したベストセラーで、私がアドラー心理学を知るきっかけとなった本です。物語としての面白さもありますが、なによりアドラー心理学の思想が衝撃的で、自分の人生を変えた一冊といってもいいくらいです。

最近、この本について批判的な意見があることを知りました。曰く「内容が偏っていて、標準的なアドラー心理学から外れている」と。それが本当なのかと気になって、改めて読んでみることにしました。私はアドラーを習い始めたばかりの初心者なので、何が正しくて何が間違っているかの判断はできません。しかし、やっぱりいい本だと思いました。数回は読んでいますが、今回もまた発見があり、勇気づけられました。

この本は教科書や解説書ではなく、対話形式で書かれた小説です。アドラー心理学に反することは(きっと)書かれてはいないとはいえ、小説なので読む人によって受け取り方が変わることはあるでしょう。それを「誤解を招く表現だ」ととるか「そんな捉え方をしなくても」と思うか。結局は読む人次第な気がします。もちろん、文章を書くということは読み手に誤解を与えない表現にすべきですし、アドラー心理学という名前を使うのならその思想に反しないように注意すべきでしょう。しかし私はこの本を読んで、ことさら「課題の分離」や「トラウマ否定」だけが強調されているとは思わなかったですし、その発想を教えてもらったことに感謝しています。

日本のアドラー心理学の第一人者である野田俊作さんは、「アドラー心理学は本を読むだけでは学べない。先生や先輩と討論しながら、実習をして初めて身につく」と述べています。本を数冊読んで知った気になった自分がいましたが、パセージ(アドラー式育児法)の講座に出てからはそれを実感しました。アドラーはお稽古事だと。だからといって本に意味が無いとは思いません。なにせ本によってアドラーの世界を知ることができたのですし、本から教えてもらったことも多いからです。私は「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」と出会えて感謝しています。もしみなさんの中で人間関係に悩んでいる人がいるのなら、お薦めします。

ところで、「幸せになる勇気」にこんな一節がありました。印象に残ったのでお伝えします。


われわれに与えられた時間は、有限なものです。そして時間が有限である以上、すべての対人関係は「別れ」を前提に成り立っています。
(中略)
だとすれば、われわれにできることはひとつでしょう。すべての出会いとすべての対人関係において、ただひたすら「最良の別れ」に向けた不断の努力を傾ける。それだけです。
(中略)
たとえばいま、突然ご両親との関係が終わってしまうとしたら(中略)、あなたはそれを「最良の別れ」として受け入れることができますか?
(中略)
そう思えるような関係をこれから築いていくしかないでしょう。「いま、ここを真剣に生きる」とはそういう意味です。