『銃口』

銃口』(三浦綾子:著)を読みました。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09402181

第二次世界大戦前後の北海道で、後に教師となる青年のお話です。

私は三浦綾子の本が好きです。何冊か読んだことがある程度ですが、どれも読むたびに感動させてくれます。この本も深く心に残る話でした。

この本の大きなテーマは戦争についてです。平和に暮らしている今の私達が忘れかけていることを教えてくれる内容でしたが、それに加えて、私は綴り方(作文)についても考えさせられました。

文中にこんな場面がありました。
小学校の綴り方の授業で、先生に「思っていることを素直に書きなさい」と言われた児童が、本当に思っていることを素直に書いたら、先生に「そんなことを書くとは何事だ」と怒られたのです。

理不尽な話ですよね。この本は戦争がテーマなのでそれを軍国主義と結びつけて話を展開させていますが、戦争が終わった現在でも起こり得ることです。

先生にとって書いて欲しい内容があるのなら、予め児童に「こういう内容のことを書くように」と伝えておけば、きっと児童もそれにそって作文をするでしょうが、「何でもよい」と言われて素直に書いて叱られるのでは、人(や世の中)を信じられなくなるでしょう。それじゃ悲しいですよね。

本を読んでいる時は正義感で「こんな時代はよくない」などと思っているのですが、実際には今のこの時代でも同じような事をしているものです。

書くということは、自分の意見を相手に伝えること。「俺の思う通りに書け」では作文ではありませんし、それは戦時下の行為と同じです。そして、もし他の人が自分と違う意見を書いたとしても、それは尊重しなくてはいけません。作文は自分と違った意見を読むという面もあるのですから。

自分と違う意見を排除したり、自分の意見を押し付けたりするのではなく、違う意見を尊重して互いの相違を理解し合うことが大切で、それは学校の授業に留まらず、ネットの投稿など多くのことにも当てはまることでしょう。戦争中とは違って今はそれができる世の中だからこそ、もっと大事にしたいと思いました。