「野の医者は笑う 心の治療とは何か?」
「野の医者は笑う 心の治療とは何か?」(東畑開人:著)を読みました。
http://www.seishinshobo.co.jp/book/b200599.html
臨床心理士である著者が、沖縄の「野の医者」(=民間のヒーラー、セラピスト)を調査して、心の治療とは何かを探る内容です。とてもおもしろい本で、あまりに面白おかしくコミカルに書かれているので創作かと思ったのですが、どうやらノンフィクションのようです。
私自身も、現代科学である心理学と民間のヒーリング(そして宗教や自己啓発など)との違いは何だろうと疑問に思っていて、自分なりの答えをなんとなくは持っていたのですが、それがこの本に書かれていたことと似ていたので少し安心しました。
心理学は学問であり科学である。物事を絶対視しないで、エビデンス(根拠)をもとに真理を探っていくものである。
他方、民間のヒーリングや宗教はそうではなく、それらは一つの物語として完結していて、信じるか信じないかの二択になる、と。(あくまで個人的な見解です)
しかし驚きであったのは、臨床心理学はエビデンスを信じている「エビデンス教」であり、神を信じる宗教や、チャクラやオーラを信じる各種のヒーリングと何が違うのかという着眼点でした。確かに。
また、心の治療で求められているものは文化や時代背景によって変わるものであり、今の資本主義社会ではそれがお金となっている。だから、最近のヒーリングで求められているものはお金と繋がっている(経済的な悩みから開放されれば幸せになれるとか、経済的に自立できるヒーラーにあなたもなりましょう、みたいな)という指摘には、なるほどなと思いました。
この著者の本は初めて読んだのですが、難しい内容を分かりやすく、そして楽しく書いていて、他の作品も読みたくなりました。著者は大学教員のようですが、教える人がこういう方だと、勉強は楽しくなるでしょうね。